数十億ドルのAI逆張り:マイケル・バリー氏の最新市場戦略の内幕
ワシントン発 – マイケル・バリー氏が再び動いた。2008年の金融危機を予見して伝説となった投資家は、今、新たな標的に狙いを定めている。それは、過熱する人工知能(AI)セクターだ。彼の運用会社サイオン・アセット・マネジメントが提出した最新の報告書によると、バリー氏はAI分野の最大手2社、パランティアとNvidiaに対し、大規模な空売りポジションを構築している。これは単なる取引ではない。数兆ドル規模に膨れ上がったAIブームが、いつ破裂してもおかしくないバブルであるという、公然かつ強力な宣言なのだ。
その詳細は驚くべきものだ。バリー氏のファンドは、合計で11億ドル(約1700億円)を超える弱気な「プットオプション」ポジションを取っており、これは報告されたポートフォリオの大部分を占めている。主要な標的はデータ分析企業であるパランティアで、500万株に相当する賭けがなされた。より規模は小さいものの、やはり大きなポジションがNvidiaに対しても取られた。NvidiaはAI革命を支えるチップを供給する企業だ。市場は即座に反応した。このニュースだけで、市場が開く前にパランティア株は7%近く下落し、Nvidiaも2%以上値下がりした。マイケル・バリー氏が規制当局への提出書類を通じて発信するだけでも、ウォール街は耳を傾けるのだ。
執筆時点では、パランティア株は市場の注目を集める中でプレマーケット取引で6.76%下落し193.18ドルとなり、Nvidiaも同様にAIバブル懐疑論がヘッドラインを飾る中でプレマーケットで約2.03%下落した。
この賭けの裏を読む
市場の取引開始を告げるベルが鳴る前から、アナリストたちはこの動きが真に何を意味するのかを解読し始めていた。彼らがすぐに指摘したのは、重要な詳細だ。この数十億ドルという数字は、対象となる株式の理論上の価値であり、バリー氏が実際に投じた現金ではない。彼はどのストライク価格や満期日を設定したのか不明なため、彼がどれだけのリスクを負っているのか、あるいはこのシナリオが実現するまでにどれくらいの期間がかかると考えているのかを正確に知ることはできない。これは長期的な信念に基づくものかもしれないし、市場の調整を見込んだ短期的な鋭い賭けである可能性もある。
しかし、この曖昧さそのものがメッセージの一部だ。彼のファンドの公開ポートフォリオの大部分を、この一つの悲観的なアイデアに投じることで、バリー氏は自身の信念を世に大きく知らしめている。これは、彼の「世紀の空売り(Big Short)」を意図的に想起させる動きであり、AI取引を特徴づけるようになっていた揺るぎない自信を揺さぶるために仕組まれたものだ。これは静かな保険のようなものではなく、市場で最も称賛される勝者たちへの直接的な挑戦である。
完璧な四半期決算がもたらす謎
バリー氏のタイミングが非常に興味深いのは、それがパランティアの見事な決算発表の直後に行われたことだ。同社は収益が急増したことを発表し、米国の商用ビジネスは2倍以上に拡大した。CEOは需要を「圧倒的な力(juggernaut)」と誇らしげに述べ、再び業績見通しを引き上げた。
書面上では、この決算は株価に逆張りしていた者を打ち砕くはずのものだった。しかし、実際には株価は下落した。これこそがバリー氏の賭けの核心だ。彼はパランティアが悪い会社だと言っているのではなく、法外に過大評価された株だと賭けているのだ。数百倍に及ぶ株価収益率(PER)を見るに、市場はすでに完璧で世界を変えるような成功の未来を織り込んでいた。株価はあまりにも高騰しており、たとえ素晴らしい四半期決算であっても、それ以上株価を押し上げるには至らなかった。その最高の楽観主義の瞬間こそが、バリー氏が必要とした脆い好機だったのである。
なぜパランティアが最適な標的なのか
トレーダーにとって、本当の話はドラマではなく、取引そのもののメカニズムにある。内部の視点から見ると、パランティアは実際のファンダメンタルズをはるかに上回って走り続けてきた株の完璧な例となっている。
この動きの妙は、そのタイミングにある。好決算の直後に仕掛けることで、バリー氏は最大の心理的影響を生み出した。企業が過去最高の業績を報告しても株価が躓く場合、それは買いたかった投資家がすでに買い尽くしているという古典的な兆候だ。評価額が限界に達したのだ。それが投資家に利益確定の口実を与え、疑念の種を蒔くことになる。
本質的に、これは企業のストーリーがその財務上の現実をはるかに先行しすぎているという古典的な賭けだ。この取引は、パランティアが失敗することを要求しない。ただ、市場がパランティアを無敵のAIの神ではなく、非常に優れたデータ企業(実際にそうなのだが)として見るようになることだけを求めている。忘れてはならないのは、商業部門での成長にもかかわらず、パランティアの収益の半分以上は依然として政府契約によるものだという点だ。予測不可能な公共支出への依存は、その途方もない株価が完全に無視している脆弱性である。バリー氏は、市場がこの事実を思い出した時、株価の評価額が現実的な水準まで急落すると賭けているのだ。
そして、Nvidiaをこの賭けに含めることで、攻撃の範囲を広げている。それは一つの企業への批判を、AIセクター全体への警告へと転換させる。また、戦略的なヘッジとしても機能する。もしテクノロジー市場全体が調整局面に入れば、パランティア個別のストーリーが直ちに崩壊しなくても、Nvidiaへの賭けが利益をもたらすことになる。
結局のところ、バリー氏は大規模な調整が迫っていると信じていることを示唆している。彼は、金融の重力の法則が間もなく再び働き始め、AIゴールドラッシュを特徴づけてきた途方もない評価額が圧縮されると賭けているのだ。彼の見解では、今、そのカウントダウンが始まっている。
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