JPモルガン、ブロックチェーントークンを発行 大手銀行がステーブルコイン競争に参入

著者
Minhyong
13 分読み

ウォール街のデジタル転換:JPモルガンがステーブルコインを導入、銀行大手が自らの牙城を築く

10兆ドルの問い:アメリカ最大の銀行がいかに資金移動のルールを書き換えるか

JPモルガン・チェースは、コインベースのBaseネットワーク上でブロックチェーンベースの預金トークンの試験運用を開始する計画を発表しました。これは、世界的にもシステム上重要な銀行が、自らの負債をパブリックブロックチェーンに載せる初めての試みとなります。

この動きは、上院が超党派の支持を得て画期的なGENIUS法案を可決したことに続くものです。これにより、米国でステーブルコイン規制のための初の包括的な連邦枠組みが確立される可能性があります。この立法動向とJPモルガンのイニシアチブは、長年にわたる暗号資産のイノベーションと伝統的銀行業務との隔たりが、多くの人が予想するよりも早く縮まっていることを示唆しています。

「JPモルガンの預金コインとステーブルコインの両方に深く関わり、理解し、習熟するつもりだ」と、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、同行の2025年第2四半期決算発表時に述べました。彼はこれまで暗号資産に対して懐疑的な見方を示していましたが、この発言をしました。「それらは本物だと思うが、ただの決済ではなく、なぜステーブルコインが必要なのかは分からない。」

言葉を超えて:JPモルガンのブロックチェーン戦略の内幕

JPモルガンの新たな許可制USD預金トークン「JPMD」は、同行が2019年から内部のプライベート台帳「Onyx」上で運用している既存の「JPM Coin」からの大きな進化を意味します。決定的な違いは、JPMDがコインベースが育成したパブリックなレイヤー2ブロックチェーンであるBase上でERC-20スタイルのトークンとして機能する点です。ただし、同行がトークンとの取引者を管理できるように、許可リストに登録されたウォレットに限定されます。

このプロジェクトは当初、機関投資家向け顧客のみを対象とし、小売向けの顧客確認(KYC)という規制上の負担を負うことなく、24時間365日の決済を可能にします。このアプローチがビジネスの観点から特に魅力的なのは、その経済モデルにあります。トークンの裏付けとなる預金はJPモルガンのバランスシート上に残り、規制上、引き続き高品質流動資産(HQLA)として適格とみなされるのです。

「これは暗号資産のイデオロギーを受け入れることではない。バランスシートの経済性と、中核事業を守るためのものだ」と、匿名を希望したシニア銀行アナリストは説明しました。「JPモルガンは毎日10兆ドル以上を処理している。もし決済インフラがトークンレールに移行するなら、彼らはその移行を先導する必要がある。後追いしてはならない。」

コインベースのBaseネットワークを選択したことは戦略的に重要です。これによりJPモルガンは、イーサリアムの開発者エコシステムとDeFi(分散型金融)インフラストラクチャに即座にアクセスできる一方で、許可リスト機能によって同行はスマートコントラクトレベルでコンプライアンスリスクを管理することができます。業界関係者は、JPモルガンが許可リストをプライムブローカー顧客、そして最終的には法人財務部門へと段階的に拡大すると予想しています。

コンソーシアム戦略:銀行業界の統一戦線

JPモルガンは単独で動いているわけではありません。ウォール・ストリート・ジャーナルは、JPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカがステーブルコイン発行に向けた潜在的なコンソーシアム方式について初期段階の協議を行っていると報じています。

シティグループのジェーン・フレイザーCEOは、同行の最近の決算発表で、シティがトークン化された預金と並行して「シティ・ステーブルコインを評価している」ことを確認しました。一方、バンク・オブ・アメリカとウェルズ・ファーゴは、連邦規制が最終化されればドルステーブルコインを発行する意欲を示しています。

「大手銀行は、今動かなければ、レガシーシステムに縛られないフィンテックのイノベーターに仲介を奪われるリスクがあると認識している」と、ベテラン決済業界コンサルタントは指摘しました。「コンソーシアム方式はカードネットワークモデルを再現できる可能性がある。共有された標準を持つクローズドループ決済を構築するが、反トラスト法上の問題も提起する。」

規制の触媒:GENIUS法の今後の行方

上院は6月17日、68対30の投票でGENIUS法案(S. 1582)を可決しました。これにより、銀行と認可を受けた非銀行の両方が厳格な規制条件下でステーブルコインを発行できる枠組みが確立されます。この法案は、100%の準備金、毎日の証明、そして資産の倒産隔離された分離を義務付けています。

この法案は現在下院に送られ、クリーンな単独法案としてのホワイトハウスの支持があるにもかかわらず、その行方は不透明です。可決への最も大きなリスクは、一部の議員がより広範な市場構造法案と抱き合わせにしようとする動きから生じています。

「規制とイノベーションの競争が繰り広げられている」と、現在金融機関にデジタル資産戦略について助言している元財務省高官は述べました。「GENIUS法案は、銀行がこの分野に本格的にコミットするために必要な規制の確実性を提供するが、それがなくてもJPモルガンなどの機関は州の信託会社設立許可を利用して進めることができる。」

市場への影響:2,610億ドルの問い

現在のステーブルコイン市場は約2,610億ドル規模で、テザー(1,600億ドル)とUSDコイン(620億ドル)が支配的です。これらの既存のプレーヤーは、準備資産から得る収益とトークン保有者に支払う金利のスプレッドから、現在の金利で年間約100億ドルという多額の収益を生み出しています。

もし大手銀行がFDIC(連邦預金保険公社)に裏付けられたトークンを、同等のユーザーエクスペリエンスで提供し、潜在的に保有者にもいくらかの利回りを提供するならば、機関投資家の財務担当者は、信用リスクのみに基づいて資金を振り替える強い動機を持つでしょう。

「たとえ銀行が現在のステーブルコイン市場のわずか30%を占めるだけでも、それは年間30億ドル以上の準備金収入を生み出す780億ドルの運用資金になる」と、大手投資銀行のデジタル資産ストラテジストは計算しました。「それは事業部門レベルでは有意義だが、短期的にはJPモルガン全体の収益を大きく動かすものではないかもしれない。」

投資への影響:勝者と敗者

大手銀行のステーブルコイン分野への参入は、金融セクター全体に様々な影響をもたらす複雑な競争環境を生み出します。

巨大銀行自体(JPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ)にとって、短期的な収益への影響は控えめに見えますが、トークン化された資金移動において足場を築くという戦略的価値は、長期的には非常に大きなものとなる可能性があります。

コインベースは、どの銀行が最も牽引力を得るかに関わらず、Baseネットワークの利用が拡大し、手数料収益を生み出す可能性があるため、恩恵を受ける立場にあります。VisaやMastercardのような決済ネットワークは、複雑な見通しに直面しています。トークンレールは最終的にカード決済を脅かす可能性もありますが、量を失うよりも銀行トークンを統合する可能性が高いでしょう。

最も明確なマイナスの影響は、Circleのような専門のステーブルコイン発行者に及びます。法人顧客が銀行発行トークンのFDICの安全性を好む場合、利益率への圧力がかかる可能性があります。ただし、テザーはオフショア市場での支配力を維持する可能性が高いでしょう。PayPalのようなフィンテックウォレットは、銀行トークンを組み込むか、既存のステーブルコインパートナーと共に留まるかを決定する必要があります。

今後の展望:戦略的ポジショニング

以下の分析は、現在の市場状況に基づいた情報に基づく見解であり、投資助言と見なすべきではありません。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではなく、読者は個別のガイダンスについてファイナンシャルアドバイザーにご相談ください。

短期的には、規制の行方が二項対立のリスク要因として残り、損益への直接的な影響は限定的です。今後24~36ヶ月で状況が変化するにつれて、特にJPモルガンとシティグループのような、高度な技術インフラと規制当局との関係を持つ銀行が、トークン化された預金の分野でかなりの市場シェアを獲得する良い位置につけているように見えます。

資産クラスとしての現金のトークン化という長期的な構造トレンドは、この移行を支えるインフラストラクチャ、具体的には専門的なサイバーセキュリティ、ブロックチェーン分析、コンプライアンス技術に潜在的な価値があることを示唆しています。

ジェイミー・ダイモンがブロックチェーン技術を渋々受け入れたのは、最終的には思想的な転換というよりも、実用的なビジネス上の考慮事項を反映しています。プロの投資家にとっての重要な洞察は、トークン化された預金の支配的な標準を確立する者が、今後何年にもわたって世界の資金移動のルールを形作るということ、そして日々何兆ドルもの決済を処理する既存の決済インフラを持つ銀行が、その競争において大きな優位性を持っていることです。

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