AI会計スタートアップDualEntry、9000万ドルを調達 — 1年かかっていたソフトウェア導入を24時間で実現へ

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Tomorrow Capital
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企業会計を刷新する9,000万ドルの挑戦:DualEntryはいかにコンサルタントを不要にするか

ひそかに活動してきたあるスタートアップが、数年を要するERP導入プロセスをわずか1日で完了させられると主張している。ウォール街の一流投資家の中には、まさに今がその時だと大きな賭けに出ている者もいる。

ニューヨーク発 — 企業資源計画(ERP)ソフトウェアがニュースの見出しを飾ることはめったにない。導入に時間がかかり、高額で、そして多くの企業にとって悩みの種であることは有名だ。企業は何年もかけて導入を進め、コンサルタントは巨額の請求書を送りつけ、財務チームは終わりのない手作業に追われる。しかし木曜日、DualEntryというこれまであまり知られていなかったスタートアップが、大胆な公約を掲げてそのベールを脱いだ。彼らはこの全プロセスを24時間で完了させられるというのだ。

同社は単なる誇大広告を売っているわけではない。すでに投資家たちは巨額の小切手を切っているのだ。DualEntryは発表したところによると、Lightspeed Venture PartnersとKhosla Venturesが主導し、GV、Contrary、Vesey Venturesの支援を受けた9,000万ドルのシリーズA資金調達を完了した。これにより、わずか1年あまりで総資金調達額は1億ドルを超え、ソフトウェア業界で最も手強い市場の一つにおいて驚異的なペースを記録している。

「ERP市場は5,000億ドル規模の機会でありながら、数十年前とほとんど変わっていません」と、Lightspeedのパートナーであるラヴィ・マトレ氏は語る。彼の所属するLightspeedはAffirmやRubrikといった企業の支援も行ってきた。そして今、DualEntryが企業の財務運営方法を再構築できると見込んでいる。

DualEntry
DualEntry

会計担当者を削減しつつ、同等の成果を

DualEntryの提案の核心にあるのは、企業が財務チームを劇的に縮小できるという驚くべきアイデアだ。年間経常収益が1億ドルを超えるバンキングプラットフォームであるクライアントのSlashは、たった一人のコントローラーですべてを処理している。CEOのビクター・カーデナス氏は率直に語った。「私たちの目標は、売上10億ドルの企業になりながら、財務担当者は一人に抑えることです。」

別の初期顧客であるTrillion Digitalは、毎日数億ドル規模の暗号資産取引を行っている。DualEntryを導入する前は、月次決算に半月を要していた。切り替えてからは、取引を毎日照合している。CEOのダニエル・バーツ氏にとって、この変化は単なる効率化にとどまらず、会社の運営方法そのものを変えたという。

スタートアップから上場企業に至るまで、DualEntryを通じてすでに1,000億ドル相当の仕訳処理が行われた。これは試験運用ではなく、システムが大規模な運用に耐えうることの証明である。

スタートアップの墓場

ERPは過酷な市場だ。SAP、Oracle、Microsoft、NetSuiteといった巨大企業が数十年にわたり支配を続けており、高いスイッチングコストと根強い顧客関係によって守られてきた。オンプレミスからクラウドへの移行でさえ、彼らをほとんど揺るがすことはなかった。多くのスタートアップがこの分野を破壊しようと試みてきたが、そのほとんどが失敗に終わっている。

DualEntryの共同創業者兼CEOであるサンティアゴ・ネスタレス氏は、その苦痛を肌身で知っている。彼の前の会社では、ERP導入に何年も苦戦した。あるプロジェクトは完全に頓挫し、別のプロジェクトは不格好で柔軟性に欠け、手作業でのデータ入力に溺れるようにしてなんとか進行していた。その経験がDualEntryのビジョンを突き動かす原動力となった。

なぜ今回の試みは違うかもしれないのか?そこには三つの力が衝突している。まず、AIモデルが構造化された財務データを管理するのに十分な精度を持つようになったこと。次に、バンキングAPIと現代のフィンテック基盤がリアルタイム接続を可能にしたこと。そしておそらく最も重要なのは、公認会計士(CPA)業界自体が崖っぷちに立たされていることだ。今後10年でCPAの4人中3人が引退すると予想されており、企業は自動化を渇望している。

「30年以上にわたり、レガシーなERPシステムは肥大化し、時代遅れでした」とKhosla Venturesの創設者であるヴィノッド・コースラ氏は述べた。彼は、AIネイティブなシステムがコストを削減し、人員への依存度を低下させ、そしてついに日次試算表の作成を実用的なものにできると信じている。これはレガシーシステムではめったに実現できなかったことだ。

移行が1日で可能に?

DualEntryの秘密兵器は、「NextDay Migration(翌日移行)」と呼ばれるものだ。簡単に言えば、AIを搭載したエンジンで、レガシーシステムからすべての明細項目、補助元帳、添付ファイルを24時間以内にDualEntryのプラットフォームに移行することを約束する。これにはSAPやNetSuiteのような大手システムだけでなく、QuickBooks Desktopのような小規模なプラットフォームも含まれる。

これが大規模に機能すれば、それは真の「堀(モート)」となるだろう。コネクタ、マッピングモデル、プレイブックの組み合わせにより、DualEntryは模倣が困難な優位性を獲得できる可能性がある。しかし、これは最もリスクの高い主張でもある。複数の事業体、特注のワークフロー、厳格な監査証跡を伴う複雑な移行は、どんなテクノロジーを使っても順調に進むことはめったにない。

移行機能に加えて、DualEntryはバンキング、CRM、給与計算、人事システムにわたる13,000以上の連携機能を提供する。そのAIは、銀行照合、調整、異常検知、コメント生成といった日常的だが手間のかかる作業を処理する。これらはすべて、実際の会計士と協力して構築されたものだ。

競争相手は他にも

もちろん、この分野を狙っているのはDualEntryだけではない。競合他社も急速に台頭してきている。Rilletは今夏、AIを活用した台帳システムで7,000万ドルを調達した。CampfireはNetSuiteを直接的にターゲットとして3,500万ドルを獲得。Nominalは、調整と計画における急速な成長を謳いながら2,000万ドルを確保した。

一方、既存大手も手をこまねいているわけではない。SAPはJouleアシスタントを、OracleはFusion AIエージェントを投入し、MicrosoftはCopilot for Financeを推進している。しかし、古いインフラにAIを付け足すことと、ワークフローを一から再考することの間には大きな違いがある。どちらのアプローチが実際に機能するかは顧客が判断するだろう。

投資家は変化の兆しを嗅ぎつける

VCにとって、ERPはすべての条件を満たしている。巨大な市場、盤石な既存大手、明白な課題、そして極めて高いスイッチングコスト。彼らの主張は明らかだ。これは、閉ざされた市場をこじ開ける数十年に一度のチャンスなのだ。

足がかりは明確に見えている。フィンテック企業、SaaS企業、暗号資産取引所、決済プラットフォームは、日次での照合やデータ集約型の自動化に準備が整っている。一方で、製造業や上場企業は攻略がより困難なターゲットとなるだろう。厳格な規制、カスタマイズされたワークフロー、レガシーなテクノロジーが摩擦を生むためだ。彼らにとっては、既存のERPの上にAIを重ねる方が、少なくとも短期的にはより現実的であることがわかるかもしれない。

注目すべき点

DualEntryがその宣伝文句に見合うものかどうかは、どうすればわかるのだろうか。最も重要なのは三つの指標だ。第一に、特に複雑な設定において、本当に数日以内で移行を実現できるのか。第二に、AIが生成した仕訳のエラー率はどの程度か。第三に、監査法人は承認するのか。ビッグ4と呼ばれる大手監査法人は、明確なデータリネージとSOX法およびSOC 2への準拠を要求する。彼らの承認がなければ、導入は停滞するだろう。

フィンテック企業での初期の成功は、製品が機能することの証だ。真の試練は、より大規模で規制の厳しい企業が、DualEntryに帳簿管理を任せるようになる時に訪れるだろう。

今後の賭け

投資の論拠はシンプルだ。DualEntryがERPの導入期間を短縮し、財務部門の人員を削減できれば、生み出される価値は計り知れない。決算サイクルを2週間から1日に短縮し、より少ない人員でチームを運営できるソフトウェアに年間数十万ドルを支払う企業は、使い続けるだろう。

短期的な市場は、APIが豊富な業界や、複数事業体の複雑性に苦しむプライベートエクイティが支援するロールアップ企業にある。上場企業は後になるかもしれないが、それは監査法人からのゴーサインが出てからだろう。

ERPの変革には、これまでも誤ったスタートの歴史がある。しかし、今回はタイミングが違うと感じられる。AIは成熟し、インフラは整い、会計人材は急速に減少している。DualEntryがこの好機を掴むのか、それともERPの墓場にもう一つの墓標を立てることになるのか、それは2025年のエンタープライステクノロジーを定義する問いの一つとなるだろう。

社内投資テーゼ

カテゴリー要約
全体的なトレンド一過性のイベントではなく、構造的変化によって顧客と資金を獲得するAIネイティブなERP/財務業務プラットフォームの著しく持続的な隆盛。
深層的推進要因1. 人材ショック: 会計人材の供給不足が自動化を強要。
2. データ連携: 最新のAPIがエンドツーエンドの自動化を容易に。
3. 既存大手の慣性: レガシーERPプロバイダー(SAP、Oracle、Microsoft)は中核プロセスの再構築が遅く、AIファーストの挑戦者に機会を創出。
競合状況挑戦者: Campfire、Rillet、Nominal、DualEntry。既存システムからの完全移行でミッドマーケットの新規顧客を獲得。
既存大手: SAP (Joule)、Oracle (Fusion AI)、Microsoft (Copilot)。組み込み型AIでエンタープライズの顧客離れを抑制。
狙う市場: 「決算・照合コントロールプレーン」の支配。
新規性 vs. マーケティング実現すれば新規性あり:
1. 移行エンジンが生む競争優位性: 「24時間」での完全なデータ忠実度での移行 (DualEntryの「NextDay Migration」)。
2. 日次/継続的決算: APIが豊富で高取引量な環境で実現可能。
3. 制御されたエージェント型ワークフロー: チャットだけでなく、監査可能な説明を伴う安全な自律性。
ターゲット市場への適合性高適合: フィンテック/決済/トレーディング、SaaS/マーケットプレイス(APIが豊富、高取引量、変化に柔軟)。
困難なモード: 製造業、プロジェクトベースのサービス、上場企業(重いカスタマイズ、レガシーシステム、厳格な監査)。
デューデリジェンス・チェックリスト1. 移行の真実性: 補助元帳や添付ファイルを含む72時間未満の移行主張を検証。
2. 監査可能性: SOC 2/SOXへの対応状況;監査法人に受け入れられる証拠パッケージ。
3. 汎用性: 複数事業体、複数通貨、会社間相殺消去を処理できるか。
4. エラー許容範囲: 自動仕訳時のエラー率;誤分類に対する責任。
5. ユニットエコノミクス: ソフトウェア収益とプロフェッショナルサービス収益の割合。
6. 防御力: 移行プレイブック、会計コーパス、コントロールフレームワークにおける知的財産。
7. 市場開拓戦略: 平均販売価格、販売サイクル、誰が支払い承認者か。
投資テーゼAPI集中型業種で移行と日次決算を支配し、監査法人レベルの証拠を提供し、プロフェッショナルサービスへの依存度が低下している企業に投資。AIネイティブなERPと既存大手向けのエージェント型レイヤーの両方でヘッジ可能。決算サイクルの短縮と人員削減による価格決定力。
オペレーター向けプレイブック1. 突破口を選ぶ: 特定の繰り返し可能なワークフロー(例:SaaS向けの銀行照合)で勝利を収める。
2. ユーザー体験よりも証拠パッケージ: 監査法人向けの不変のデータリネージを優先。
3. 制御された自律性: 信頼度閾値とポリシーチェックを使用。
4. 移行のプロダクト化: マッピングとデータ遡及を中核IPとして扱う。
5. APIが活きる分野から開始: APIが豊富なセクターから始め、その後拡大。
主要リスク1. 「24時間移行」の主張が大規模で実現しないこと。
2. ビッグ4監査法人による承認の遅れ。
3. 既存大手によるバンドル圧力。
4. データ品質の特殊ケースやロングテールな請求書でのモデルの失敗。
市場開拓の軌跡1. 現在〜12ヶ月: APIが豊富なミッドマーケット(フィンテック、SaaS)。
2. 12〜36ヶ月: PEロールアップ企業および複数事業体を抱える後期段階の企業。
3. 36〜60ヶ月: 監査法人の承認を受けた証拠を通じて上場企業へ。
DualEntryの評価シグナル: 強力(Aクラスのシンジケート、9,000万ドルの資金調達)。 カテゴリーリーダーとしての可能性: 主要ERPからの10件以上の完全移行の実績と継続的決算に対する監査法人の承認が得られるかどうかにかかっている。

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